2013/02/16

使用済み核燃料について

どうも使用済み核燃料の危険性について話が噛み合ないなぁと思ってたんですが(脱原発な方であってもですが)どうも「高い放射線を発する燃えカス」の様にイメージしておられる方が多い様でして。で、自分のメモがてら書いてみようかなと。

まず新しい核燃料(以下、新燃料と記載)の構成ですが、4.5%がウラン235で残りの95.5%がウラン238の物が使われます。この比率は原子炉の構造により若干異なります。ウラン235は核分裂を起こしやすくウラン238はほとんど核分裂を起こさないと言われます。ウラン235は一定以上の量が一カ所に集まると勝手に核分裂を始め臨界状態となってしまうため同位体元素のウラン238で薄められているわけです。この新燃料を核分裂させ莫大な熱量を発生させ湯を沸かしその蒸気でタービンをまわし発電しているのです。つまりエネルギーの取り出し方は蒸気機関車や蒸気船と同じです(^^;;

そうやって核分裂させた燃料ですが使用済みとして取り出された頃にはウラン235は1%程度にウラン238は92%程度に減少しています。その代わりに核分裂による生成物であるプルトニウムやストロンチウム、セシウム、セリウムと言った物が残りの7%程度を占めることになります。この生成物が厄介で剣呑なシロモノで、決して「燃えカス」などではないのです。

これら核分裂生成物はこれ以上核分裂反応は起こしませんが原子として安定もしていません。放射線を撒き散らしながら壊れてゆくのです。よく言われる放射性核種ってやつです。その過程に於いて崩壊熱を発生します。この崩壊熱は核分裂のときに発生する熱量と比べ格段に小さいです、が比べる対象が違い過ぎます。

極端な話、核分裂が無制御に行われれば(つまり臨界を越えれば)その発生熱は数億℃にも達します。コレは重水素などの原子に核融合を起こさせることが出来る程の高熱です。これが水素爆弾の原理です。

一方で崩壊熱はせいぜい数千℃です。しかしここでチョッと考えてみて下さい。一般的な金属の融点は1500℃程度です。つまり放っておくと格納容器を溶解し中の放射性物質が空気中に拡散されることになるのです。メルトダウンの発生です。中のプルトニウムやストロンチウムはウランなどとは比べようも無く毒性が高く放射線も高いのです。こうならない様に使用済み核燃料はプールで冷やし続けなければいけないのです。崩壊は数十年続きその間は冷却を続けなければならないわけです。

また、メルトダウンを起こすばかりではありません。大量の使用済み核燃料が過密に配置されたプールで1本でもメルトダウンが発生すれば他の使用済み核燃料も連鎖的にメルトダウンが進み中のウラン235が溶け出します。これらが狭い箇所に集まれば再臨界の発生、つまり核爆発の怖れすらあります。少量のウラン235の核爆発が引き金となり核分裂を起こしにくい大量のウラン238までが核分裂を起こせばその被害は想像することすら出来ない程の惨事となるでしょう。

たとえ数十年を掛けて崩壊熱が十分に収まったとしても放射性物質が無くなったわけではありません。ウランはもちろんのことセシウムなどの半減期の長い物はまだまだ大量に残っています。これらをガラス固化し地中深く埋めてしまおうと言うのですが、ココにも問題が残っています。

先ず、生命にとって脅威とならないレベルにまで使用済み核燃料の放射線量が落ちるまでに数十万年から数百万年かかると試算されます。しかもガラス固化によりその期間は延びるとも言われています。数十万年。過去に遡ると、今の定説に従えばクロマニヨン人を通り越しネアンデルタール人の時代です。数百万年ともなると猿人でしかありません。

もう一つ、現在のガラス固化技術ではせいぜい1000年程度しか安全に保管出来ません。結果、1000年毎に再度ガラス固化させなければいけないのですが、一度ガラス固化させた物をどうやって再度ガラス固化させるのか、今のところノウハウは無い様です。だいたい1000年後のダレにそれを託すのでしょう?地球歴史的規模で見れば1000年などあっという間でしょうが人間にとっては悠久の時の流れです。1000年前の日本と言えば平安時代にあたります。1000年後の日本人に責任丸投げですか?

そしてもう一つ、日本にはこのガラス固化した使用済み核燃料を安全に保管出来る地層がありません。地上に漏れ出ない様に地下深くに埋める、もしくは格納しなければいけません。が、日本はご存知の通り大陸のプレートと太平洋のプレートがぶつかり合って出来ている島です。そのプレートは歪みながら、ひずみながら、そして激しく裂けながら地中深くマグマ層まで沈み込んでいます。日本の地中深くはズタズタなのです。こんなトコロに核物質を数十万年から数百万年もの間どうやって安全にかつ完全に管理出来るのでしょう?崩壊熱は収まっているはずですが、それも不確実な話で監視を怠ることは出来ません。

たった数ヶ月から数年発電のために使った新燃料は莫大な費用と、とてつもない長い期間を掛けて始末しなければならないのです。余りに馬鹿げた話です。

以上は私が独自に調べてまとめた内容ですので全てが正しいとは限りません。明らかに誤りがあれば訂正したいと思いますのでご指摘頂けると大変ありがたいです。

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